日本MRSでは2019年からMRM国際会議に合わせてチュートリアルを実施してまいりました。これは「本会議で取り上げる難しいマテリアル研究の内容を、初学者(学生や企業の方)にもわかりやすくお話ししていただく」ことを目的にしており、「最近の材料研究のトピックスをより深く理解するための解説講義」です。
・日時:2023年12月10日(日) 14:00〜17:00 2会場4講義
・形式:完全オンライン
Online A 会場 | |
TU-1 |
12月10日(日) 14:00~15:20 プラズマ材料プロセス科学と最先端応用
講演者:
堀 勝名古屋大学 名誉教授、特任教授
概要:
プラズマは、電子、イオン、ラジカル、光の粒子の集団であり、大規模集積回路デバイスや機能材料の合成をはじめとするデバイス・材料を中心にほとんどすべての産業を支えている最先端科学技術です。
特に、プラズマと材料との相互反応によって、様々な材料に対して、エッチング、薄膜堆積、表面改質などを低温で実現することができます。近年、大気圧下でガス温度が低い、大気圧低温プラズマの生成が可能となり、プラズマを液体や生体に照射できることから、新しい材料プロセスが勃興し、産業のみならず医療や農業への展開が活発に行われています。
本チュートリアルでは、プラズマが誘起する気相、固体表面、液体、生体で生じる物理化学反応を体系的に分かりやすく整理するとともに、最先端の応用を示すことで、プラズマに従事していない方々にとってもプラズマプロセス科学を理解し、その応用の最前線に関する知識を修得していただきます。
座長:
内田 儀一郎 名城大学
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TU-2 |
12月10日(日) 15:40~17:00 金属三次元積層造形最前線(レーザ粉末床溶融結合法)
講演者:
渡邊 誠国立研究開発法人 物質・材料研究機構
概要:
三次元積層造形(以下AM)は、新しいものづくり技術として大きな注目を集めている。航空宇宙分野や生体材料分野等を中心に利用が拡大し、さらに様々な産業分野において開発が進められている。従来プロセスでは困難な複雑形状を有する部材を製造可能であり、複数パーツで構成されていた部材を単一部材とすることや、自由度の高い設計による軽量化や高機能化の実現といった利点を有している。AM技術として様々なプロセスが開発され提案されているが、本チュートリアルでは、チタン合金やニッケル基合金といった金属材料を対象としたレーザ粉末床溶融結合(Laser Powder Bed Fusion(PBF-LB))法を中心に紹介する。基本的なプロセスの仕組みや、粉末床の溶融凝固挙動、得られる材料組織の特徴、力学特性などについて紹介する。
座長:
有沢 俊一国立研究開発法人 物質・材料研究機構
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Online B 会場 | |
TU-3 |
12月10日(日) 14:00~15:20 量子ビーム(放射光、中性子、ミュオン)を用いた材料科学
講演者:
木下 豊彦公益財団法人高輝度光科学研究センター
概要:
現代の物質材料科学で、放射光、中性子、ミュオンなどの量子ビームは大きな役割を果たしている。利用のためには大型施設に出向いて実験をする必要があるが、その必要性が広く認識され、多くの研究者に利用されている。今回のMRMのグラウンドミーティングにおいてもA3やB2セッションをはじめとして、量子ビームを利用した研究成果が報告される。本チュートリアルでは、今後の利用に向けての簡単な研究事例、利用方法などを紹介する。
座長:
渡邉 友亮明治大学
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TU-4 |
12月10日(日) 15:40~17:00 コロイド量子ドットと太陽電池応用
講演者:
久保 貴哉東京大学 先端科学技術研究センター
概要:
物質はその組成以外にも形状やサイズにより様々な物性を示します。バルクからナノシート、ナノロッドやナノワイヤ、ナノドットと、物質の次元性が3次元から低次元化することでも、光電子物性に強く影響を与えることがあります。例えば、半導体物質の大きさが、励起子ボーア半径程度になると、光吸収や発光波長位置のサイズ依存性など興味深い物性を確認できます。中でも、化学合成法を用いてボトムアップ的に形成するコロイド量子ドットでは、その特徴の一つである発光の色純度の高さを活用したディスプレイ応用が実用化レベルにあります。さらに機能性材料として、バイオマーカーや、光検出器、太陽電池など多様な応用展開が期待されています。コロイド量子ドットは、2023年ノーベル化学賞に貢献した中心的物質でもあります。
本チュートリアルでは、コロイド量子ドットの特徴、コロイド量子ドットから作った固体膜が示す半導体特性を利用したデバイス応用例として量子ドット太陽電池について解説します。
座長:
重里 有三青山学院大学
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